マジックじゃなく、素敵な時間をくれるマジシャン

わたしは、子供のころ、よく母親に百貨店に連れて行ってもらっていた。
わたし自身が特になにか買うわけでもなかったのだが、ダダをこねてまで、ついていったときもあった。
その理由は、その地下にあるオモチャコーナーの店頭にいた、
即席のマジックショー兼マジックグッズを売るマジシャンを見に行くためだった。

わたしは、そこでずっと飽きもせずマジシャンのマジックを見ていた。
おそらく、記憶をたどれば最前列でひとりで見ていたと思う。

ずっと、同じマジックをみながら、
子供心にこのひとはきっと魔法つかいなのだろうと、
本気で思っていた。

そして、それはわたしと、彼だけが知る秘密なのだと。

いや、実際にはマジックということを理解できるまでにはオトナにはなっていたのだが、
心のどこかで「きっと、これはこの人の特殊な力なんだ」と本気で信じていたし、いまも完全には否定できない夢見がちな自分がいる。

いま思い返すと、
彼のしていたマジックの内容自体は、コップをつかったボールが消えたりするものやトランプといった古典的なものだったが、
当時感じたワクワク感はいまでもはっきり覚えている。

これが、マジシャンっていう仕事なんだろう。
いまでも、誰かに覚えられてるなんて、とても素敵な仕事だと思う。

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